1974 | 千葉県生まれ |
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2000 | 東京造形大学美術1類卒業 |
2004 | 東京藝術大学大学院美術研究科修了 |
2012 | 第27回ホルベイン・スカラシップ奨学者 |
東京都在住 |
1974 | Born in Chiba, Japan |
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2000 | Graduated from Tokyo Zokei University, Painting Department |
2004 | Graduated from Tokyo National University of Fine Arts and Music, Master Course |
2012 | The 27th Holbein Scholarship |
Lives and works in Tokyo |
なぜ風景を選択するのか
表現する事は自分への問いかけ、確認から始まっています。
おそらく風景は世界中の誰をも包囲し、私をも包み込みニュートラルに映じる大きな媒体だと思います。 風景から何か、大きな力を感じる時、それはまるで限りある私たちを囲み込むための大きな装置、仕掛けのように思えるのです。 私を映す風景は名勝であったり奇観である必要はなく、むしろ私が幼い時から一緒にいた空気を持った風景、ゆっくり風が流れ私を生かしてくれる大きな器としての風景です。 私はそこに、時にアルプスのような、時に日本の、いずれにせよ私を投影する匿名の場所に過去の記憶や憧れを含む私自身を見出せます。
そこで私が表現するのは風景のディテールではなく私の感情の揺れでもあります。 目の前にある風景、そこに風景のもつ本質が潜んでいるのではないかと考えるときに、そのディテールには全く私を投影出来るものはなく、 むしろそのディテールを飛ばした所に何かがあるように思います。それらディテールは風景上で何かを隠す粉飾の道具のような役割をしている気がするのです。
描く風景を選択する時は写真、雑誌などを利用して偶然に手元に落ちてきた風景を優先しています。 私の解釈以上の風景と出会うために、選択した風景のディテールをPCの力と恣意的な操作で飛す作業をします。 写真とは愚直なもので、手を加えたにもかかわらずその風景の空気の含有量をそのまま残してくれます。 それを壊さないように出来るだけオートマティックにローラー、マスキングテープを使いもう一度、私を通して元の風景に返していきます。 そこにはもともと風景が持っていた大きな風の量が現れ、またその風景の色彩も含有量を違わずに現れてきます。
私は風景をただ再現するのではなく、ディテールに邪魔されず、その風景の本質、つまり私たちを包み込む空気、 風、生きることを包囲する何かを再現しようと試みています。
阿部未奈子